ユーザージャーニーを改善する:コンテンツのプランニングでよくある3つの質問にお答えします

By Jill Nicholson

先日開催されたウェビナー「Understanding the Data Behind Your Traffic, Engagement, and Content Strategy(トラフィック、エンゲージメント、コンテンツ戦略の背後にあるデータを理解する)」では、MarketMuseのチーフプロダクトオフィサーであるJeff Coyle氏と一緒に、世界中のコンテンツ制作者が直面している切実な疑問にお答えしました。とりわけ頻繁に聞かれるのが「コンテンツのプランニングや戦略づくりのために、データを解釈する最善の方法は何か?」という質問です。

以下に、その疑問にお答えする方法を抜粋してご紹介します。明確なデータに基づいた戦術を用いて差し迫った疑問にチームで答えを出したり、データを活用してロイヤルティの高いフォロワーを獲得する戦略を成功させたりするための方法です。(ウェビナーのビデオを見たい方は、このリンクからご覧いただけます。)

質問1. エンゲージメント戦略をどのように立てたらよいですか?

この問いに答えるプロセスのほとんどは、組織のタイプを問わず共通しています――つまり、「どのようにデータを見るか」という点において企業文化に明確な変化を起こすことです。編集チームやコンテンツチームに求められる仕事の量が多いと、彼らは「公開」ボタンを押してそのコンテンツのことを忘れてしまいたくなる誘惑に駆られるでしょう。確かに、コンテンツを制作するプロセスでは最善の判断をしているかもしれませんが、その判断が完璧になることはありません。ですが、読者がコンテンツとどのように関わり合っているかを知れる適切なデータがあれば、問題を発見し、その情報を使ってコンテンツを公開した後も試行錯誤を重ねることができます。

その情報をもとにして、戦略を進化させ、より簡単に読者の目線に立ってインサイトを理解できるようになります。自社をデータに基づいた企業文化へと変えるのは難しいことですが、健全なバランスが必要です。私はいつもパートナー企業に「指標は何をすべきかを教えてくれるのわけではありません、自分が今何をしているかを問いかけるために役立ちます」と伝えています。


このセクションの理解を深めるために

「データの民主化」とは、データやインサイトを少人数のアナリストたちに限らず、組織内のあらゆるステークホルダーが利用できるようにすることを意味します。

MarketMuseの友人によると、コンテンツ効果率は「どのくらいの頻度で初期段階から適切なコンテンツを提供できているか?」「チームのKPI達成に寄与するコンテンツに集中できているか?」のような質問への答えをピンポイントに導き出すのに役立ちます。多くの場合、データを理解し、オーディエンスからのシグナルを理解することが成功の鍵となります。それはコンテンツへの初期接点だけでなく、その他のさまざまな相互作用を理解する必要があります。


成功への確かな道筋には、悪い数字を恐れない文化を作ることも含まれます。あまりに多くの場合、コンテンツチームはデータを用いて成功(ページビュー数の増加、購読者数の増加、コンバージョンの増加など)を讃える一方で、損失(直帰率の増加、滞在時間の短縮、訪問者のロイヤルティの低さなど)を無視しています。 ひどいケースでは、指標を人を殴る棍棒のように使っている組織もあります。御社のスタッフがうまくいかなかったことを言うのを恐れている場合、それはたいてい文化的な問題なのです。

スタッフがオーディエンスの「北極星(=改善すべき特定の指標)」に集中し続けることが不可欠です。それはなぜ最も重要かといえば、さまざまな指標に(ロイヤルティの高い読者数からコンバージョン率まで広範囲に)関連性を感じているチームは、多くの場合、目標に到達するための創造的な方法を見つけられるからです。

このような変化は独力では起こせません。リーダーは、チームのモチベーションを高めて集中力を維持できるようにし、たとえ最初はうまくいかなくても、組織全体で「データの民主化」が行われれば目標にたどり着けることを強調する必要があるのです。

とはいえ、データの専門知識にはまだ価値があると思います。つまり、分析の専門技能をもつ人がより深い分析を行い、その情報を会社の他の人に伝えて戦略を前進させる役割です。

なぜそうする必要があるのでしょうか? ことデジタルコンテンツに関しては、視聴習慣が非常にすばやく変化するので、典型的なエンゲージメントパターンが一瞬にして変わりうるからです。分析の専門家がそれを理解した時には、読者はすでにメディアを離れてしまっているでしょう。

エンゲージメント戦略のてびき

ここからは、さらに強力なエンゲージメント戦略を構築するためにおすすめしたいことを紹介します。

  • 画面の向こう側にいる読者のことを現実的に考えましょう。サイトのページビューを追いかけることはできますが、それだけでは十分ではありません。読者にサイトで見たことを覚えてもらい、コンテンツやブランドに愛着を持ってもらいたいのであれば、公開しているコンテンツに15秒以上滞在してもらう必要があります。リーチは常に、読まれ方の質を評価する指標で補う必要があります。
  • エンゲージ時間(滞在時間)とロイヤルティを測り始めましょう。Chartbeat社のデータサイエンスチームが頻繁に言うことですが、単一の指標だけで全体像を把握することはできません。読者のインタラクションを理解するためには、互いに関連しあう2〜3の指標を厳選して必要があります。
  • ユーザージャーニーを理解しましょう。オーディエンスをあなたのプラットフォームに再訪問させるまでにどれくらい時間がかかりますか?何をコンバージョンと捉えますか?それらが決まったら、次の質問です。目標とするコンバージョン率は? そして、コンバージョンに至るまでに消費されるコンテンツ数と目標は直結していますか?
  • マルチチャネル戦略が重要です。Google経由でコンテンツを見つけた読者は、ソーシャル経由の読者と同じように行動するわけではありません。例えば、モバイルの読者はデスクトップの読者よりもロイヤルティが高く、根本的に異なる方法でコンテンツを発見し、インタラクションしていることがわかっています。
  • とにかくどこかから始めて、改善に向けて努力しなければなりません。最初の一歩から、直感的な判断からデータに基づいた戦略へと変われるわけではありません。リストをいくつかの指標に絞り込み、施行錯誤を通じてベストプラクティスを見つけられるようになるなかで、戦略はより洗練され、心地よいものになっていくのが実感できます。

質問2:新規獲得とリテンション、どちらが大事ですか?

現実を直視しましょう。ほとんどのコンテンツチームは新規ユーザーの獲得に集中しすぎています。コンテンツマーケティングでは、リード数が目標になることが多いでしょう。メディアや出版では、目標は新規購読者やロイヤルティの高い購読者かもしれません。新規読者の獲得には、既存の読者を維持するよりもはるかにコストがかかることを考えると、ファネルのその先にあたる部分をサポートするために優先順位を再調整する必要が多分にあります。

これは世界中のマーケティング責任者にとって最も難しいケースの一つですが、Chartbeatにおいて最も成功した戦略は、新規獲得とリテンションに明確なバランスを設けていました。


このセクションの理解を深めるために

モバイルのホームページでは、平均的な訪問者はデスクトップよりも40%多くの時間をアクティブに過ごしていることがわかりました。また、クリックする可能性も20%高くなっています。これが、以下で説明するコンテンツのキュレーションが重要な理由です。

モバイルにおけるホームページのエンゲージメントについて、詳しくはこの過去記事をご覧ください。


ここ数年、私たちのクライアントの戦略においても、リテンション重視へのシフトが見られるようになってきました。リテンションに焦点を当てることで、柔軟性が生まれ、さまざまなアプローチや戦術を試せるようになり、何がうまくいっているのか、何がうまくいっていないのかを見極めることができます。

デバイスに基づいたユーザージャーニーのてびき

  • コンテンツへの訪問のうち、3回に2回はモバイルです。ファネルに新しいプラットフォームを導入し、新しい方法でリテンションを高めましょう。ここでは、モバイル体験を最適化する方法を紹介します。
  • より深いユーザージャーニーを促すモバイルのレイアウトを試してみましょう。例えば、デスクトップサイトと比較して、コンバージョンがモバイルで発生した場合、ユーザー体験がどのように変わるかを考えてみましょう。
  • 在宅勤務中心のライフスタイルになっても、デバイスの構成比はあまり変わりませんでした。オーディエンスは仕事が自宅で行われていたとしても、勤務時間中はデスクトップをメインデバイスとして使う傾向があります。
  • 「モバイル向けのコンテンツは短くなければならない」と考える傾向がありますが、Chartbeatが収集した多くのデータによると、適切なコンテンツであればモバイルの読者も長時間のエンゲージメントを望んでいることがわかっています。オーディエンスのエンゲージメントを高めるには、画像の配置やコンテンツのキュレーション、レイアウトを調整によって、モバイル体験を最適化する必要があります。
  • Googleのコンテンツエコシステムから目が離せません。非常に成熟したプラットフォームであるにもかかわらず、Googleは予想外の方法で反復し、成長し続けています。例えば、Google Chrome Suggestions(=モバイル版Google Chromeの「おすすめ記事」)やその他のモバイルアグリゲーターは、Twitterよりも多くのトラフィックを牽引しています。ほとんどの人がTwitterの戦略を持っているとは思いますが、Google Chrome Suggestionsの戦略を持っている人はほとんどいないのではないでしょうか。
  • SEOやSEM戦略を構築する中で、重要な問題が残っています。それは「どのようにこれらのチャネルを利用してユーザージャーニーを前進させるか?」ということです。つまり、より多くのコンテンツでより高いエンゲージメントが得られるようなユーザージャーニーをどう作るかということです。読者が閲覧するページやコンテンツの数が多ければ多いほど、リピーターやコンバージョンの可能性が高くなることがわかります。
  • 上記について、検索やソーシャルなどのプラットフォームからの訪問で1ページビューしか得られていない場合はコンバージョンに苦労することになります。私の場合、特にプラットフォーム経由の訪問者に対しては、読者を他のものに移動させて、より自社との接点を保つことを考えるようにしています。

質問3:どのように深い読者体験を促せばいいですか?

Chartbeatでは「回遊率(Recirculation)」のレンズを通じて読者体験の深さ――つまり、読者が次に何を読み、それがどのように選ばれているか――を測っています。私たちのデータによると、検索経由のトラフィックに対しては、記事のトピックと密接に関連したコンテンツをレコメンドする必要があります。

ソーシャル経由で訪問したオーディエンスは「ウサギの穴(=横道にそれる)」についていきたがっています。どちらの場合でも、特定の検索エンジンやSNSでうまくいった作品を特定するためにコンテンツを振り返ることは常に価値があります。


このセクションの理解を深めるために

検索経由のトラフィック=「使えるニュース」に関心の高い読者が集まる ソーシャル経由のトラフィック=感情的なコンテンツや人間的な側面を描くストーリーに反応する読者が集まる


このように区別することで、コンテンツをより差別化でき、アーカイブを活用して入魂の記事を読まれ続けるようにできます。関連記事を選んだら配置とポジショニングを慎重に考えましょう。スクロール深度を測ることで、回遊を最も促進するリンクの挿入場所を見つけるのに役立ちます。また、リンク自体にテキストを挿入することはできません。関連記事の価値を明確に述べ、釣り記事ではなく関連情報を提供しているという信頼感を読者に与えましょう。

深い読者体験のてびき

コンテンツを回遊させて深い読者体験を促す方法を考えてみましょう。

  • 読者の疑問に答えてより多くの情報を与え続けるために、読者を次のユーザージャーニーの段階に導きましょう。
  • どんな情報構造が読者に最もウケるかを判断しましょう。例えば、最初の文章(メディアでは「リード文」と呼ばれます)は事実ベースか、それとも逸話的なほうがよいのか? ということです。リード文にはエンゲージメント向上とSEOの両方の意味合いがありますが、早い段階で適切なトーンを選ぶことが重要です。
  • ロイヤルティの高い読者が好むコンテンツは、新しい読者には見慣れないものでしょうか?コンテンツの組み合わせをセグメントするために指標を用いることで、さらなる成功につながります。あなたの経験と組み合わせて、コンテンツの体裁が読者にどのようにアピールできたかを理解しましょう。
  • 新しいコンテンツと最適化を活用して、トラフィックを集めているページを守りましょう。「ゾンビ記事(=突然トラフィックが急増した過去の記事)」の情報やリンクを更新することで回遊率を向上できます。

前向きなユーザージャーニーを構築しよう

最後に、ユーザージャーニーを改善・合理化・最適化するための3つの重要なステップを紹介します。

  1. 読者の視点でサイトを客観的に見ることから始めましょう。新規訪問者や月に1回程度再訪問する読者にとって、より多くのコンテンツを発見するのはどれくらい難しいことでしょうか?
  2. 指標を確認しましょう。コンバージョンに至るまでには、通常、コンテンツとの接触が何回必要でしょうか?これを知ることが試行錯誤のための出発点と目標になります。
  3. 試行と反復を繰り返しましょう。指標が何を表しているかを確認し、進むべき道筋を示すような施策を構築します。これは単なるひらめきではなく、組織文化のシフトを導き、チームに力をもたらす方法でデータを民主化する第一歩です。
Chartbeatでコンテンツの貢献度を分析しせんか?