ペイウォール・モデル大全: 現状と新たな手法

By EMILY INGRAM

パブリッシャーが読者を収益源の中心にした投資を続けるなか、どのペイウォールモデルを突き詰めたり、テストしたりするべきかという問題は、多くのChartbeatパートナー企業の間で熱い話題となっています。

ペイウォール主導の戦略を検討しているなら、この記事を読めば、主要なペイウォールモデルを理解し、それぞれがどのように自分に適しているのかを理解できます。また、先進的な企業が、成功を目指すにあたりこれらのモデルをテストするために何をしているのかを知ることも重要です。

ハードペイウォール・モデル:門に鍵をかける

ハードペイウォールを簡単に言うと、すべてのコンテンツの門を閉じて、コンテンツ全体を閲覧するためにユーザーはサブスクリプション契約が必要となるものです。エコノミスト(下図)はこの10年間でこのモデルを採用しており、ウォールストリート・ジャーナルやフィナンシャル・タイムズなどの出版社は1990年代以降、ハードペイウォールの利用に成功しています。

エコノミストのペイウォール・モデル

ハードペイウォールは、現在ではあまり見かけません。特定のニッチ領域で市場を支配しているコンテンツは、最も報われやすく確実だという従来からの常識があるからです(エコノミスト、ウォールストリート・ジャーナル、フィナンシャル・タイムズに共通するものは何だと思いますか?)。

このような要素が自社コンテンツに当てはまらない場合、ハードペイウォールで成功するのは困難な道かもしれません。なぜならサブスリプション契約の見込みがあるユーザーの大半は、柔軟性に欠けた障壁に遭遇するとサイトを離脱する傾向があるからです。また、広告収入の減少など、経営的な影響を考慮した計画を立てなければなりません。

メーター制ペイウォール・モデル:成長に余地を残す

メーター制ペイウォールは、読者がペイウォールが表示される前に、限定的にサンプル記事を閲覧できるようにします。よく知られているのは、ニューヨーク・タイムズとボストン・グローブが使用しているメーター制ペイウォールで(下図)、広く採用されています。特に米国は昨年時点で、76%近くのオンライン新聞が導入しています(欧州では46%が導入)。

メーター制ペイウォールを利用しているパブリッシャーは、ショーレンステイン・センターのレポートに詳細が記載されているように、時間の経過につれて戦略により精通し、より成功しています。メーター制ペイウォール戦略の長所と短所は、実際には同じです。ペイウォール戦略を成功させるには、綿密なデータとレポートをもとに頻繁にテストを繰り返す必要があります。

(次の記事もさらにご覧ください: サブスク契約者分析:リアルタイムでのパブリッシャーの充実と強化

フリーミアムペイウォール・モデル:複合型

「フリーミアム」(Freemium)モデルは、読者に無料(Free)とプレミアム(Premium)コンテンツを混在して提供し、編集チームはしばしばペイウォールの背後に表示する記事を編成します(この用語は、「tele=離れた所」+「work=働く」で「テレワーク」のような複合語です)。

フリーミアムペイウォール・モデルの例

一般的にペイウォール・モデルの世界的な人気を見ると、フリーミアム・ペイウォールはメーター制ペイウォールと肩を並べており、特に欧州の新聞社(上記の NRC.nl のようなもの)や、あらゆる地域の新聞社や雑誌社の間で広く採用されています。メーター制ペイウォールと同様に、組織は頻繁なテストを進んで繰り返し取り組み、対象となる市場を深く理解する必要があります。

ハイブリッドペイウォールモデル:最先端

どのようなペイウォールのモデルを選択しても、テストと革新が成功の鍵となります。ですので、なんらかの手法で専門知識を磨くサブスクリプションに特化したパブリッシャーが、さまざまなペイウォール設定の要素を組み合わせたモデルを構築することで成功を収めています。

このアプローチは(上で見たように)、「ハイブリッド」、「ダイナミック」、または「インテリジェント」ペイウォールとして知られています。次のようなものもあります。

  • 「抜け道がある」ハードペイウォールとして機能し、特定のセグメントのユーザーがコンテンツにアクセスできるようにして、パブリッシャーは消費者向けマーケティング、製品、編集戦略を練るため、読者の閲覧習慣についてのデータを収集できます。ウォールストリート・ジャーナルは、この戦略を利用しているパブリッシャーの1つです。
  • コンテンツの障壁で表示するオファーの種類を調整します。これは、サブスクリプション契約、ニュースレターへの登録、あるいはユーザーとしてサイトに登録するための行動喚起リンクです。
  • 有料サブスクリプション契約者とサイト無料登録ユーザーに限定したプレミアムコンテンツや体験型イベント、ニュースレターなどを追加して、メーター制モデルとフリーミアムモデルの要素を組み合わせます。上図で示したフィンランドのカウパレティは、この戦略を採用しているパブリッシャーの一つです。
  • ペイウォールの障壁が表示される前にユーザーが読める記事数を自動調整するため、ペイウォールのメーターを動的に調整する賢いルールを統合します。この戦略は、ワシントン・ポストのようなパブリッシャーで採用されています。

これらの新しい手法がペイウォール配信という分野で進歩することはワクワクします。パブリッシャー組織の複数のチーム(編集、プロダクト、マーケティング、データサイエンスなど)の緊密な連携と調整が必要なので、なおさらです。

役割や部門間を超えて洞察と結果を促進するツールを開発することにコミットしている製品チームを率いる者として、私はこれらのテストに目を凝らしています。

ペイウォール・モデル:先を見通す

今後、パブリッシャーが自社に適した手法を試行錯誤し、テストを重ねる中で、これらすべてのカテゴリーがますます曖昧になっていくことが予想されます。

一方で、長期的にサブスクリプション契約者を維持するには、その契約者を深く理解する必要があります。サブスクリプション契約者の行動の詳細については、最も直近のデータを参照してください。


Emily Ingram (@emilyingram)は、Chartbeat のプロダクトマネジメント担当ディレクターで、デジタルパブリッシャーのニーズに応えるツールの開発に注力しています。それ以前は、ハフポストとワシントン・ポストでシニア・プロダクト・マネージャーを務め、ワシントン・ポストの全国的なiOSアプリとデジタル・パートナー・プログラムを立ち上げました。

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